「日中韓の棟梁 技を語る」講演会
先日、竹中大工道具館記念イベント「技と心」講演会に行ってきました。
日本、中国、韓国の棟梁の3人の講演会と3人によるディスカッションです。
日本は小川三夫棟梁。高校生の時、法隆寺を観て感動し西岡常一棟梁に21歳でやっとの末入門し、唯一の内弟子になりました。
中国は、李永革。故宮博物院内の修理・復元事業を手掛けています。
韓国は申鷹秀。南大門、水源華城長安門復元工事などを行っています。
この三国の棟梁の話です。建築の違い、大工道具の違い、棟梁として伝えたいこと、・・・同じ東アジアの地域といえ、木造建築・宮殿建築を通して面白い話が聞けました。
まず{建築木材}では、小川「日本で木は檜のこと。昔の大工は檜は建築に適していると知っていた。だから法隆寺は千三百年経った今でも現存する」
李「中国は楠木ナンボク(日本には分布しない)」。申「韓国は赤松」
檜は中国や朝鮮半島には分布しない。「日本書紀」のスサノオノミコトの諸説には「檜は宮殿に、杉とクスノキは舟に、槇は棺に使え」と記載されています。
道具では、{カンナ}の使い方が面白い。日本は引いて使うが、中国、は押して使う。韓国は両方ある。押す使い方のカンナは、とっ手が付いています。申「引くのを使ったがカンナは押すほうが楽」
また、{鋸}では中国はほとんど全て枠鋸。大きな木は二人で引く。李「日本の鋸は中国では刀鋸と言う。それはまっすぐ切れない」。小川「枠鋸は使ったことない。枠が邪魔になりそうだ。しかし、昔日本も枠鋸を二人で使っており、ある大工が一人で引く鋸を発明し一人で引き、二人分の儲けをした。と文献にあった」
{彩色}についても、日本は素木の木目の美しさが大事。中国は彩色のランクがあり色は重要。韓国は宮殿は彩色を施すが住宅は木目の美しさが重要視される。
{大工の腕の見せ所}として、三国共、「軒の曲線が重要」。小川「大工は軒で泣く」
中国は、垂木は扇状に配置していますが、日本の垂木は規則正しく平行に配置しています。よって端の方の垂木をとめるのに隅木が重要です。
{棟梁とは}、李「仕口、木、部材の特性を把握する」
申「恥ずかしくない仕事を残す。良い弟子を育てる」
小川「全部の責任を負う。棟梁は言い訳しない」
{三国の違い}は、申「中国の垂木は全体の屋根スケールからして細い。韓国は丸太をそのまま使い太い。未だに土葺き。日本は屋根の荷重を小さく努力し、痛んだ垂木の個所を古材を再利用し修復している。韓国は昔の材寸法、工法は改善できない」
三国共通の意見は、「木が無い。木を育てるのが重要。」
三国の棟梁の話を通して、木造建築の木組み・人組みの精神が国が違えど、同じ流れがあると思いました。日本では最近大型建築でも木造が多く建てられ、木が見直されてきました。一番のネックとなっていた耐火についても研究されてきています。昔の大工はよく知っていました。自分たちの風土や木の質、使い方を。
「木を知るには土を知れ」
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