西山卯三の記録
西山卯三
建築家であり建築学者、少年期は漫画家志望。大学教授であり住宅探検家。
様々な顔をもつこの方は、日本の住宅研究の原点といえる「住み方調査」を実行しました。
庶民の住宅を中心に研究し、自らの住まい方も記録に残した。そして、アパートや建売、長屋、農家、兵営、ドヤ、飯場、炭鉱住宅、学生寮、プレハブ住宅、・・・あらゆる住まいの現地調査を詳細なスケッチで記録しました。
図の中には、人々の暮らし、家財道具など詳細に描かれています。その中でも、不良住宅調査は戦後の日本の住宅の問題点を書き留め、未来の住処について大きな成果になっています。



西山は漫画家志望だったこともあって非常に誰が見てもわかりやすい図になっています。
建築だけではなく、生きるということに関するすべてのものをスケッチしまくっています。

「食寝分離論」はまさに地道なフィールドワークから導きだされたものです。
個の住まから都市計画に至るまで、個の暮らしの重要性を柱にし大きく広がりをみせていきました。
地域問題をテーマにするときも西山は人間のそこでの生活を主張しました。自動車に依存しすぎる生活が地域の秩序を乱し結果的に貧しい生活空間をもたらすと言っています。

路面電車は公共交通では人間的でよい。京都の市電を守る運動をしていました。

スケッチブック約120冊、日誌約400冊。
面白いのは、西山はたえず東大の丹下健三を意識してきた。
大阪万博では丹下と総合プロデューサーを任されましたが、地域に対する方向性は全く違う。丹下は「大都市拡張型の地域開発」、西山は「日常生活の充実、就住近接、自動車交通の抑制」。
京都の景観問題、町並み保存運動。「地元住民の運動こそが真の都市計画だ」

西山卯三の原点。それは自らの足を現地に運び体感し、詳細に記録し(わかりやすく)後世に残す。地域性、階層性、時代を読みとり住まいを解き明かす。
未来へ伝える記録魔・西山卯三。
記録がない。記憶がない。・・・どこかの人たちに西山の爪の垢でも煎じて飲ませたい。
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